ナローバンドUVB療法

アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬の患者さんには夏に海水浴に行くと 一時的によくなることが経験的にわかっていました。これは海水につかったからよくなったのではなく、日光にあたることにより太陽光に含まれる紫外線を浴びることでアトピー性皮膚炎、尋常性乾癬がよくなったのです。このことを利用したのが紫外線療法です。
ソラレンという光感受性を増強させる薬と長波長紫外線(UVA)を組み合わせたPUVA療法として長い間使われてきました。通常の治療に反応しないような難治の方にもきわめて有効ですが、長波長紫外線(UVA)は皮膚の光老化を促進し、ソラレンによる悪心・胃腸障害が問題でした。また、小児・妊婦へ使用することができませんでした。また、長波長紫外線(UVA)はわずかながらも発がん性があるので、長期のわたった治療での安全性が常に疑問視されてきました。
ナローバンドUVBはアトピー性皮膚炎や尋常性乾癬の治療効果が高い311~313ナノメートル(nm)の非常に幅の狭い波長の中波長紫外線みを照射することができます。このナローバンドUVBを治療に使うことによって、紫外線の害を最小限に抑えて、小児・妊婦にも使える高い治療効果を発揮することができます。

ナローバンドUVBの治療メカニズム

一、T細胞に対する効果

紫外線療法の作用機序として、①サイトカイン・ケモカインというからだの細胞から放出され病気を抑えたり、悪くしたりする物質への影響、②接着分子という細胞と細胞をつなぐ物質への影響、③アトピー性皮膚炎や尋常性乾癬の病因となる“問題のあるT細胞”のアポトーシス(細胞の自殺)誘導、④病状を抑える制御性T細胞の誘導などがあります。
このうち③のT細胞のアポトーシス(細胞の自殺)誘導が重要で、アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬の原因となる真皮に浸潤した“問題のあるT細胞”を紫外線により自殺させて取り除き、病状をよくします。また、④の病状を抑える制御性T細胞の誘導によって病状のよい状態を長続きさせることができると考えられています。

二、表皮内神経線維に対する効果

重症のアトピー性皮膚炎や長期化して難治性となった慢性湿疹、自家感作性皮膚炎(湿疹)では、頑固なかゆみに抗アレルギー剤の内服が効かなくなってしまっています。それは、かゆみを感じる知覚神経の神経線維が皮膚の表皮と真皮で増えるためです。
健常者では、神経線維は表皮-真皮境界部のみに存在します。ところが、重症のアトピー性皮膚炎、難治性慢性湿疹、自家感作性皮膚炎(湿疹)の方では、かゆみで皮膚を掻き破ることを繰り返すことで神経線維が伸びて表皮上層まで侵入して数が増えています。これに乾燥、発汗、衣類の刺激などの外的な刺激が加わると神経は簡単に反応してしまい、強いかゆみを感じるのです。この状況がつづく限り、かゆみ→掻破→神経線維の増生→かゆみの増強→さらなる掻破と悪循環が続いていきます。紫外線治療は、この増生した神経線維を減らして、表皮へ侵入を押させて、ステロイド外用剤、抗ヒスタミン内服剤・抗アレルギー内服剤でコントロールできるかゆみへと戻していくのです。

健常者の皮膚:神経線維は表皮-真皮境界部のみに存在

重症アトピー性皮膚炎、難治性慢性湿疹、自家感作性皮膚炎(湿疹)の皮膚:神経線維が伸びて表皮上層まで侵入して数が増えています。「アンテナを張り巡らせた」ような状態になることで神経が敏感になって激しいかゆみを引き起こしています。

ナローバンドUVB治療を検討した方がよいのは

● 重症のアトピー性皮膚炎、尋常性乾癬で現在の治療に満足されていない方。
● 長期化して難治性となった慢性湿疹、自家感作性皮膚炎(湿疹)で頑固なかゆみに抗アレルギー剤の内服が効かなくなってしまっている方。
● アトピー性皮膚炎、尋常性乾癬でステロイド外用剤の使用量を減らしたい方
● 頑固なかゆみで睡眠が十分にとれない方にも向いています。
※小児・妊婦の方にも安全に治療できます。

治療頻度と時間

原則として週に1~2回の通院が必要です。症状がよくなると2週に1回の通院になることもあります。照射時間は1回の照射が通常1-5分程度です。

病院で設置しているナローバンドUVB紫外線治療器

半身型ナローバンドUVB紫外線治療器

全身型ナローバンドUVB紫外線治療
搭載ランプ:フィリップス社製 ナローバンドUVB TL-01蛍光ランプ 10本使用

ナローバンドUVB光治療法は、フィリップス社より開発した治療法です。
90年代に、フィリップス社で蛍光管(フィリップスTL01)が開発されました。
フィリップスTL01蛍光ランプから照射した紫外線の波長域は311±2nm です。
その波長域311±2nmの紫外線は、ナローバンドUVB紫外線と呼ばれ、乾癬を初めとして、アトピー性皮膚炎、白斑、多形日光疹、菌状息肉症の治療に用いられています。
世界中(日本含め)の病院で設置しているナローバンドUVB紫外線治療器は、ほとんどフィリップス社ナローバンドUVBランプを使用しています。

ナローバンドUVB光治療の副作用

ナローバンドUVB紫外線は、表皮だけに到達し、メラノサイトを刺激します。
真皮にまで到達しないので、安全な紫外線治療法だと言えます。

照射後に、皮膚の赤み、色素沈着(日焼け)、ほてり感、ヤケドなどがあります。
PUVAの紫外線療法より肌に優しい、副作用少ないです。
乾癬に対するビタミンD3製剤外用に関しては、紫外線によって外用薬が分解してしまうとの報告がありますので、照射後に外用する必要があります。

ナローバンドUVB光治療で発癌の可能性は非常に低いです。
欧米での長期にわたる研究結果、我が国におけるデータからもこのナローバンドUVB光治療を受け、ガンになった例がございません。
発癌のリスクに関してはまだ不明な点もありますが動物実験、臨床データよりUVBと同等前後のリスクもしくはそれより少ないと考えられています。
小児(10歳以上)や妊婦にも使用可能とされています。

在宅光線療法
海外では,在宅光線療法でナローバンド UVB 療法を行うことは,臨床試験や実績で治療効果,安全性については問題ないとされ,外来での照射と較べて,医療経済上のメリットや患者の QOL(quality of life)から考えると,有利な点が多い。

通常、乾癬の治療において、ナローバンドUVB照射治療は非常に有効であることが知られています。現在、この治療は病院で行われており、患者さんは定期的に病院に通う必要があります。しかし、小型のナローバンドUVB治療器を自宅に購入することで、在宅で簡単に治療を受けることができるようになりました。この在宅紫外線治療法は、新しい治療法として注目を集めています。

在宅紫外線治療法のメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  1. 自宅で治療が受けられるため、病院に通う手間や費用が削減できます。
  2. 治療時間や頻度を自分で調整できるため、自分の生活スタイルに合わせた治療が可能です。
  3. 長期的に治療が必要な場合でも、在宅で治療を受けられるため、治療継続が容易になります。
  4. 治療器を家庭に備えることで、将来的な治療費用が削減できる可能性があります。

一方、在宅紫外線治療法のデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

  1. 治療器の購入費用が高額であるため、初期費用がかかります。
  2. 自己判断で治療を行うため、治療の効果や副作用を正しく理解し、注意する必要があります。
  3. 一人で治療を行うため、治療中のトラブルや問題が発生した場合、すぐに対処できない可能性があります。
  4. 治療器のメンテナンスや交換が必要になる場合があります。

将来的には、在宅紫外線治療法がより一般的になり、より手軽に、より安全に治療が受けられるようになる可能性があります。また、治療器の技術が進化し、さらに効果的で安全な治療器が開発される可能性もあります。