「乾癬」治療の最新事情

新たな技術で劇的に変化、「乾癬」治療の最新事情

「乾癬(かんせん)」と聞いてすぐにどんな病気なのか思い浮かぶ方は、少ないのではないでしょうか。患者さんに「これは乾癬という病気です」と言っても、「?」という顔をされることが多いです。

実はここ5年間ほど、皮膚科医の中で乾癬はホットなトピックになっています。なぜかというと、治療がわずか数年で進歩し、症状が重い場合にも注射の薬でうまく治療できるようになったからです。今回は、その最新治療を具体的に紹介していきましょう。

乾癬とは
乾癬は、皮膚が赤くなりがさがさする病気としてはアトピー性皮膚炎の次に多いもので、区別がつきにくい場合もあります。私のところに来た患者さんでも、今まで湿疹として治療されてきたけれどなかなか治らない、という方がよく見ると乾癬だったということが何度かありました。頭皮、肘や膝の表側にできやすく、アトピー性皮膚炎とは違って、がさがさした赤い部分の周りの境界がはっきりしています。


乾癬の症状。皮膚が赤く、がさがさに。まわりとの境界がはっきりしているのが特徴。

アジア人ですと0.5%、つまり200人に1人ほどが乾癬です。結構多いという印象をもたれると思いますが、実際に電車の中で偶然目にすることもまれではありません。ちなみに白人では2%、つまり50人に1人が乾癬なので、街中でもよく見かけますし、アメリカではメジャーな病気として扱われています。

重い症状にも効果の高い新薬が登場
この乾癬には、症状が軽い場合にはぬり薬を使いますが、重い症状に劇的に効く、という薬がつい5年前まではありませんでした。飲み薬や紫外線を当てる治療はあったものの、効果が不十分だったのです。

2010年に「レミケード」と「ヒュミラ」という注射薬が保険の範囲内で使えるようになり、それが大きく変わりました。3ヶ月間、注射を2週間~2ヶ月程度の間隔で使うだけで、ほとんどのがさがさした赤みが消えてしまう、という薬です。しかも、ヒュミラは点滴ではなく、予防接種のように皮膚に刺すだけの注射なので、痛みも少ないですし簡単です。病院を定期的に受診して問診や血液検査、レントゲンを受ける必要はありますが、それ以外は自宅にて自分で注射している患者さんもいるくらいです。

注射は副作用が大きいのでは 、と心配される患者さんも多いのですが、以前使われていた飲み薬よりは副作用が少なく、定期的に検査をしていれば安心に使えます。わずかに結核にかかりやすくはなりますが、検査を受けていて実際に結核になる方はまれです。

さらに、2011年には「ステラーラ」という注射薬が登場しました。この薬は 3ヶ月に1回の皮膚への注射でいい皮膚の状態を保てます。しかも、結核に対するリスクも少ないです。

重症の乾癬。範囲が広くぬり薬では難治。新しい注射薬の出番です。

2015年に入ってから「コセンティクス」というさらに新しい注射薬も出ました。また、ほかにも治験(新しい薬が認められる前にテストすること)の最終段階にきている注射薬がいくつかあるので、これから数年のうちにまだいくつか新しい注射薬が発売になることと思います。この中には今ある注射薬よりもさらに効果が高く、より注射の間隔を長くできるとされているものがありますので、乾癬の治療はより便利になっていくことでしょう。

ただ、これらの注射薬でも一定の間隔で打ち続けなければ効果を保つことはできません。乾癬そのものを直しているのではなく、乾癬の勢いを抑えているからです。それでも注射薬のおかげで、Tシャツを夏に着られるようになったと大喜びしていた患者さんがいるように、生活は大きく変わります。

それ以外にも、アメリカでは2014年から乾癬に使われている「Otezla」という飲み薬があります。これは1日2回飲むだけで採血もいらない、というとても使いやすい薬です。現在、注射薬は日本皮膚科学会が認めている大きな病院でしか使えませんので、Otezlaが日本でも認められれば、クリニックでもできる治療の幅が広がる可能性があります。効果は注射薬にはかないませんが、注射を打つほどではないけれどぬり薬では症状を抑えられない、という場合にいい選択肢になることと思います。

新薬の効果が高いにもかかわらず副作用が少ない理由
なぜ新しい注射薬は副作用が少ないのによく効くの?と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。カゼをひいたときに、自分の体の中の免疫が働いて細菌やウイルスを攻撃するのと同じように、皮膚にも免疫の力があります。この自分自身の皮膚免疫が異常になってしまい起こるのが乾癬です。以前から乾癬に使われてきた薬は体内の免疫全体を抑えて治す、というコンセプトだったため、感染症になりやすくなる、ほかの臓器にもダメージを与える、という強い副作用がありました。

しかし、2010年以降に出てきた新しい薬は免疫のうちごく一部、乾癬の原因になる部分だけを抑える治療なので、副作用が少ないのです。しかも乾癬の原因となっている異常な免疫(TNF-α、IL-23、IL-17と呼ばれます)をピンポイントでブロックするので、効果は高くなるというわけです。ここ10年の研究によって異常な免疫の原因がわかり、そしてそれをブロックする技術が開発されたことで可能になった治療法なので、まさに最新の研究成果が生かされて劇的に治療法が変わったのが乾癬と言えます。

このように特定の原因をブロックすることで病気を治す、という治療法はアトピー性皮膚炎や皮膚ガンにも広がりつつあります。これらの病気の最新治療についても、今後お伝えしていきたいと思います。

From 皮膚の健康ガイド

コメントを残す